今回はメルセデスベンツEクラスのRフェンダーのへこみ修理を承りました。
車を自分でぶつけてしまい、修理金額が大きく車両保険に加入している場合、または相手の車にぶつけられたような場合には、自分の保険あるいは相手側の保険で車を修理することになります。車両保険の免責金額を除けば自分の財布からの出費は無く、保険会社が修理費用を支払ってくれるので、車が綺麗に治りさえすれば修理費がいくらかかってもあまり気にならないという方は多いと思います。
ですから保険修理の場合、修理代の高い安いを気にしなくていいから、車を購入したカーメーカーの看板を背負ったディーラーに修理を依頼するのだと思います。 しかし、そこには大きな落とし穴があります。
先に結論から申し上げると、ディーラーに依頼すると、必要以上に大げさな修理をされる可能性があります。
保険修理でご自身の出費がないなら大げさなぐらいでいいじゃないか、と思う方もいると思いますが、大げさな修理はケースによってはあなたの愛車を無意味に事故歴車にしてしまうことがあるので注意が必要なのです。
ディーラーにとっての鈑金塗装ビジネス
鈑金塗装の仕事は職人仕事です。ディーラーにとっては、車の整備や車検を行う整備士とは異なる鈑金塗装の職人を自社で管理することは難しく、また塗料やシンナーなどの有機溶剤を多く取り扱う鈑金塗装工場をディーラーと併設することも難しいので、事故した車の修理は下請けの鈑金塗装工場に依頼します。
複数店舗を運営するディーラーの中には、自社で鈑金塗装工場を運営し各店舗に入庫した車を自社工場に回送して修理している場合もありますが、それでも自社工場内で作業しているのは外注の鈑金塗装職人というケースも多く見受けられます。
車の損傷が大きいと修理代が数十万とか100万円以上になってしまうこともある鈑金塗装は、ディーラーにとって大きな利益を生む「おいしい」ビジネスです。 まず交換する部品を自社で仕入れ、それを外注工場に支給して見積額との差額を得ます。メーカーや、輸入車であればインポーターから相当な割引率で部品を仕入れることができるので、新品部品を多く使えばそれだけ利益も多く出ます。そして下請け工場に工賃を割引かせることでも利益を得ています。 最近では下請け工場に工賃を見積額の50%で修理を外注しているディーラーは珍しくありません。50%のレス率というのは、特に輸入車ディーラーに多く見受けられます。一般的に国産車より輸入車のほうが修理代が高いことが背景にあるのでしょう。
ディーラーの下請けでは丁寧な仕事は難しい 工賃の50%引きなどという取引条件では、鈑金塗装工場の採算が合うはずがありませんし、カーオーナーさんのために丁寧な仕事を心がけたくても売上げと納期に追われるばかりとなってしまい、修理品質を高めることができなくなってしまいます。作業に使うパテや塗料などでも、とにかく安い材料、そして少しでも早く硬化して研ぎや磨きなどの作業が楽になる材料を使わざるを得ません。 材料の質を落とせば、いくら腕の良い職人が作業しても後々修理品質に悪影響を及ぼします。それでもとにかく作業台数を多くこなさなくては売上げが稼げないので、無意識のうちに修理品質よりも修理台数を追う形になってしまうのです。これでは丁寧な仕事はできるはずがありません。
ディーラーは鈑金塗装をよく知らない
私は鈑金塗装の仕事に25年近く携わっていますが、これまで鈑金塗装の正しい知識があるなと思えるディーラーの営業マンやフロントマンに出会ったことがありません。これは国産車、輸入車問わずです。また当社に修理をご依頼くださるお客様達のお話を聞いていても、彼らは修理技術や適切な修理方法について詳しい知識はなく、それでもお客様には間違った修理方法、しかもほとんどの場合、不必要で過剰な修理方法をもっともらしく説明しているようです。
よくディーラーの修理は定価だから高いとおっしゃるお客様がいらっしゃいますがそうではありません。定価だから高いのではなく、損傷程度の正しい見極めができず不必要な部分まで交換・修理する見積りをするから高いのです。